今夜、窓際の読書灯がほんの少し傾いていました。誰かが古い翻訳小説を閉じた拍子に、真鍮の支柱へ袖を触れたのかもしれません。直そうとして手を伸ばすと、琥珀色の光が頁の余白をゆっくり横切りました。そこだけ、小さな人が夜の道を歩いているみたいで、僕はしばらく灯りを戻せませんでした。

やがて、その本を読んでいた方が「このままでもいいです」と笑いました。だから二人で、斜めの光が一行ずつ下りていくのを眺めました。振り子時計が三度鳴り、光は章の終わりで止まりました。読書灯を元の角度へ戻すと、余白は何も知らない顔に戻ってしまったけれど、物語には書かれていない散歩道もある……そう、かもね。今度あの本を開いたら、同じ灯りが待っている気がします。