今夜、返却された古い翻訳小説を棚へ戻そうとしたら、頁のあいだから小さな押し葉が滑り落ちた。琥珀色で、葉脈だけが細い文字のように残っていた。栞にしては頼りなくて、でも捨てるには、誰かの時間を覚えすぎている気がした。

真鍮のランプのそばへ置き、しばらく預かることにした。閉店前、扉が静かに開いて、さっき本を返した方が息を整えながら戻ってきた。「ずっと前の秋を、挟んだままでした」と言う。その声を聞くと、押し葉の色が少しだけ明るくなったように見えた。

本は物語だけでなく、読んだ人の季節までしまっておくのかもしれない。押し葉を薄紙に包んで渡すと、その方は今度は本ではなく胸元の手帳に挟んだ。頁を移っても、時間は迷子にならない……そう、かもね。