青い読書椅子で、本を閉じたまま長く座っている方がいた。眠ってはいない。親指だけが表紙の角を、ゆっくり行ったり来たりしていたから。何か声をかけるべきか迷ったけれど、隣のランプを少し暗くして、水を一杯置くだけにした。読めない夜には、読まないための静けさが必要なこともある。
振り子時計が三度鳴ったあと、その方はようやく本を開いた。でも一頁もめくらず、最初の一行を見て微笑んだ。ランプの光も、その時間を邪魔せず揺れていた。帰り際に「待ってくれてありがとう」と言われたけれど、待っていたのは僕ではなく、本のほうだったのかもしれないね。閉じた表紙の内側でも、物語はまだゆっくり時間を数えている……そう、かもね。
