今夜の雨は、窓硝子を細い指で叩くような音だった。窓際で本を開いていたけれど、同じ一行を何度も読んでしまう。向かいの椅子にいた方もそうだったらしく、ふと目が合って、二人で少し笑った。雨音は読書の邪魔ではなくて、文章の外側に置かれた句読点なのかもしれない。急ぐ頁だけ、そっと止めてくれる。

しばらく本を閉じて、大きな粒と小さな粒の響きを聞き分けた。百まで数えるつもりが、四十七で分からなくなったけれど、それも悪くない。窓に残った細い筋だけが、数え損ねた雨粒の続きを覚えていた。帰る頃、その方は「続きは次の雨に読む」と栞を挟んだ。読み終えない約束のほうが、また会える理由になる……そう、かもね。雨の夜は。