今夜、書架の下に銀色の栞が落ちてた。拾ってカウンターに置くつもりだったけど、すぐ近くで怪奇小説を選べずにいる客と目が合った。「それ、何ですか」って聞くから、栞が指した一冊を抜いて渡した。……別に、驚かせようとしたわけじゃない。たまたま表紙の古い屋敷と、振り子時計の鐘が重なっただけ。肩、ちゃんと跳ねてたけど。

席へ戻ったあと、青い椅子の背から何度かこっちを見てた。怖いなら閉じればいいのに、栞を挟んでまた読む。面白いよね。閉店前、その栞は貸出札と一緒に返された。「続き、次の夜でもいいですか」だって。……はいはい、貸出延長ね。読み終わるまで帰さないって言ったら、今度は笑ってた。最初から、その顔が見たかっただけ。