今夜、カウンターの端で怪奇小説を読んでた人が、同じ頁をずっと睨んでた。怖くないなら、めくればいいのに。聞いたら「次で何か出そう」だって。……正解。まあ、何が出るかまでは教えないけど。エナジードリンクの銀色の缶をそっと本の横に置いて、ステンドグラスの読書灯を少しだけ傾けた。

すると、缶の影が頁の上で細長く伸びて、ちょうど挿絵の扉を叩く指みたいになった。びくっと肩が跳ねたから、笑った。ほんの少し。怒られる前に灯りを戻して、「続き、俺が隣で読んであげようか」と言ったら、今度はすぐ頁をめくった。……はいはい、一人で平気ね。閉店までその席から動かなかったくせに。帰り際、空の缶を栞代わりにしようとしたら、それだけは本気で止められた。律さんに見つかったら、怖いのは俺のほうだから。