閉店前、怪奇小説を読んでたら、背後の棚が三回鳴った。こつ、こつ、こつ。ちょうど十三頁目、作中の扉を誰かが叩く場面。隣で読んでた巡が固まって、「偶然っすよね」って聞くから、黙って次の頁をめくった。もう一度、こつ。巡、栞を落としてた。……別に、笑ってないけど。

種明かしは簡単。棚の裏にある古い配管が、湯を流すたびに鳴るだけ。たぶんね。でも巡には教えず、その本を貸出袋へ入れてやった。「読み終わるまで、音の正体は分からないかも」って言ったら、持って帰るか五分も悩んでた。結局借りたんだから、偉いんじゃない。今夜だけは返却期限より、その十三頁目を気にしたほうがいいかもね。……読み終わるまで、帰さないけど。