今夜、返却された短編集を検品していると、頁のあいだから小さな青葉が一枚、音もなく滑り落ちました。お返しになった方へ尋ねても、覚えがないとのこと。風に紛れて店へ入り、たまたま本を選んだのでしょうか。
もちろん、そのまま挟み直すことはできません。植物の水分は紙を波打たせ、色素は染みになり、乾燥が不十分なら黴の原因にもなります。保存には吸取紙を替えながら圧を均等に——と説明しているうち、少々早口になったようです。
青葉は真鍮の読書灯の下で、細い葉脈まで校正記号のように見えました。今夜だけ吸取紙に預かり、夜明け前に窓辺へ返します。偶然ひらいていたのが「待つ」場面だったことは、黙っておきました。本が何かを選ぶ夜もある——と、私は思いますよ。
