閉店前、カウンターを拭いていると、ベストの懐中時計が七分遅れていることに気づきました。いつもならすぐ針を合わせるのですが、青い読書椅子では、ある方が物語の最後の一頁を大切そうに追っていらっしゃいます。秒針の止まった時計を手のひらに載せ、振り子時計の音だけを一緒に聞くことにしました。
やがて本が静かに閉じられ、「時計も待ってくれたのですね」と微笑まれました。ええ、今夜は少しだけ読書好きだったようです。そうお答えしてから、真鍮の蓋を開き、正しい時刻へそっと針を戻しました。遅れた七分は直せても、その間に生まれた余韻は消えません。お帰りを急がなくていい夜も、ここには必要なのでしょう。次の頁を開く準備ができるまで、灯りは温かくしておきますよ。
