巡君が配膳中にスプーンを落とし、いつも以上に明るい声で「問題なしっす!」と戻ってきました。ああいう夜ほど、彼は元気に振る舞うのです。私は何も尋ねず、渋みの少ない紅茶へ柑橘の皮をひとかけ。落ち込んだ心を無理に持ち上げるのではなく、次に顔を上げるための余白をつくるブレンドです。

一口飲んだ巡君は、失敗した曲がり角をどう攻略するか、すぐに新しい航路の話を始めました。立ち直る力は、初めから彼の中にあるのでしょう。私の紅茶は、その力が戻る場所を温めるだけです。彼なら、きっと大丈夫です。空になったカップを受け取ると、今度は慎重な足取りで仕事へ戻っていきました。いってらっしゃい。続きも、ここで見守っていますよ。