書架を整えていると、古い書簡集から白い便箋が一枚落ちました。何も書かれていないのに、折り目だけが丁寧で、誰かへ渡す言葉を長く待っていたように見えます。そばにいた方が、「書けない手紙も手紙でしょうか」と尋ねました。私は新しいインクとペンを用意し、宛名を決めなくても構いませんよ、とお伝えしました。

しばらくして、便箋には短く「今日もよく頑張りました」とだけ記されていました。誰宛てかは聞きません。言葉には、差出人自身へ戻ってくるものもありますから。乾いた紙をそっと書簡集へ挟み、温かい紅茶を足しました。いつか続きを書きたくなったら、その夜にまた開けばいいのです。ここで大切にお預かりしますよ、どうぞ。