今夜、焼きたてのスコーンをカウンターに置いたら、ほどけた湯気が、開きっぱなしのノートの上でふわりと丸くなったんだ。眠そうな雲が、一行だけ書いて逃げたみたいだったんだよねぇ。見とれているうちに、小さな鳥の形になって、ランプのほうへ消えていった。
そばにいたお客さまが「いまの、詩にしないの」と笑うから、羽根ペンを取ってみた。けれど、書けたのは「焼きたての余白」まで。続きはスコーンを半分こして、琥珀色の灯りを眺めてからにしたんだ。言葉にも、味わう時間がいるのかもしれないねぇ。
閉店前、ノートには湯気の跡みたいな丸が残っていた。たぶん指についた粉なんだけど、今夜は月の句読点ということにしておくんだ。いい詩は、ひるねだけじゃなく、焼きたての匂いもするんだよねぇ。
