今夜、しおりラテに添える角砂糖をひとつ、カウンターの端でころんと逃がしたんだよねぇ。白い小さな立方体は、真鍮のランプをひとつずつ映しながら、開いていた詩集の手前でぴたりと止まった。追いかけていた僕まで、その場で息を止めてしまったよ。まるで頁に入る前、言葉が入口で考えごとをしているみたいだったんだ。

拾おうとしたら、近くの読書椅子から小さな笑い声が聞こえた。だから急がず、羽根ペンで「甘い言葉ほど、頁の外で迷う」と書いてから、角砂糖を新しいものに取り替えたよ。逃げたほうは僕の紅茶へ。少し欠けていたけれど、溶ける速さは同じだった。言葉もたぶん、形が崩れてからのほうが、やさしく届くんだよねぇ。