今夜、真鍮のランプのまわりを、小さな白い蛾がくるくる飛んでいたんだよねぇ。頁をめくる風にもついてきて、僕の詩集の上へ、しおりみたいにそっと止まったんだ。羽を閉じた姿が、まだ読まれていない一行に見えてね。起こさないように羽根ペンを置いて、しばらく一緒に黙っていたよ。振り子時計まで、いつもより小さな音で歩いている気がしたんだ。

やがて入口の扉が開いたとき、冷たい夜風が細く入ってきた。掌を本のそばへ差し出すと、その子は指先に乗って、それから真鍮の灯りをひとつ回り、路地の暗がりへ帰っていったよ。詩集には何も残らなかったけれど、空いたところへ「羽ばたいたあとの静けさも、ひとつの頁」と書いたんだ。迷子を見送る夜は、少しだけ本を閉じるのが惜しくなるんだよねぇ。